六下り
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 有明の油 六下り 有あけの油も元は菜種なり蝶がこがれて逢ひに 来る昔おもへば深い仲笑はれる氣で来たわいな
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より このやうに 六下り 此やうに私のあるのを知りながらあの又女も女なら たとへ一夜のしやれにせよ嬲らしやんした主もぬし
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より こり性で 六下り 凝り性で逢へバ帰るがいやになり私も帰すがいやになる
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 風鈴の音 六下り 風鈴の音に氣がつき縫針やめて風邪引かしやん すなとかい立てそつと取出す夜着まくら酒が過ぎ るも口のうち寝がほのぞいて笑ひ顔
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 浮氣うぐひすげつそり 六下り 浮氣うぐひすげつそり痩せて梅もきらへば桜も いやよづんと呑氣に日を暮らす
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 月は田毎 六下り 月は田毎にうつれどもまことの影は只一とつ 行かふ雲が邪魔をする実にうたてき秋の空
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 高砂や 六下り 高砂やこの浦船に帆をあげて月もろともに いで汐の浪のあはぢの島かげや遠くなる尾の 沖すぎてはや住の江につきにけり
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より お前故なら 六下り お前ゆゑなら天神さんへ願かけて梅を生涯たちますと いふたが私が無理かいな実もつともだ
小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 思ひこんだる 六下り 思ひこんだる我恋は先が邪険できれ言葉 たとへ切れても退きはせぬ思ひこんだる主じやもの わたしや未練があるわいな