本調子

五つでも

五つでも四つでも苦もせぬ今宵 やってはならぬ無理にとめ 心のこして明の鐘 <奥付がない小唄集より>

いくら口説いても

いくら口説いても戸板に豆よ いつそあんなやつあ死ねばよい <奥付がない小唄集より>

いつしかに

いつしかに 縁は深川なれそめて せけば逢いたし 逢えば又 浮名立つかや やる瀬なや それが苦界じゃないかいな とかく浮世は色と酒 浮名立つともままの皮 浮いた世界じゃないかいな <奥付がない小唄集より>

いさましや

いさましや 枕にひびく太鼓の音 ちょっと手拭とり腹やぐら 四十八手もとりつくし エ もし場所があるではないかいな <奥付がない小唄集より>

伊勢の荒布

伊勢の荒布と今宵の客を 見れば見るほど しおらしや しおらしや <奥付がない小唄集より>

一日逢わねば

一日逢わねば千日の思いもつもる夜の雪 更けて鳴子のおとづれはもしやそれかと飛び立つばかり 通う心の合い鍵に開けてうれしき胸の木戸 <奥付がない小唄集より> これにも、清元「忍逢春雪解」 の一節が最初に入っています。

一日逢わねば

一日逢わねば千日の思いもつもる春の夜も 静かに更けて冴え返る寒さをかこう袖屏風 入谷の寮の睦言も淡き火影の波うたす すき間をもるる雪颪(おろし) <奥付がない小唄集より> 清元「忍逢春雪解」 の一節が最初に入っています。 三千歳と呼ばれているのは…

硯引きよせ

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 硯引きよせ 本調子 硯引きよせ文かきつばたあすハ浮名を菊の花やんれ

隅田川

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 隅田川 本調子 すみ田川すみ田川初霜のきて肌寒く鷺に鴉に 都鳥かれ野に紅葉夕景色のり合の船ぢやのり 合の船ぢやえ

簾おろした

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 簾おろした 本調子 簾おろした船のうち顔は見えねど羽織の紋は たしか覚への三つ柏呼んで違はゞなんとせう後や 先とにこゝろが迷ふえゝえゝも自烈たい舟のうち

誓紙

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 誓紙 本調子 誓紙かく度三羽づゝからすが熊野で死んだけな

世辞で丸めて

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 世辞で丸めて 本調子 世辞で丸めてうは気でこねて小町のやうな私さへ一と 夜の嵐に誘はれて散れバこの身はねえもし一休さん

せかれせかれて

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より せかれせかれて 本調子 せかれせかれてくよくよ暮すえたまに逢ふ夜ハせか れては逢ふあふてハせかれ別れともない明の鐘

望の月

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 望の月 本調子 望の月雲間はなれてさへざへし小唄の友と 水入らずかわして見たき主の声

百千鳥

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 百千鳥 本調子 海苔粗朶も梅の花さくばかりかな春の香誘ふ 汐さきによれや磯子の百千鳥チョン来な来な横浜 横だよチョン来な来な杉田もすぐだよ

紅葉して

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 紅葉して 本調子 紅葉して昔ながらの小倉山きみの御幸を待つ わいな木でさへこゝろあらばこそ

ひとふし

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より ひとふし 本調子 ひとふしは仇な文句を楽しみて聞けばきく程 味のあるこれは茶の友酒の友

ひと声は

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より ひと声は 本調子 一と声は月が啼いたかほとゝきすいつしか白む短 夜にまだ寝もやらぬ手枕や男心はむごらしい女心は さうぢやないかた時逢はねばくよくよと愚痴な やうだが泣いてゐるわいな

久松よ

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 久松よ 本調子 久松よ久松よひさようよいよいよいなぜに己れハ内方 さんの娘ごさまをばやれそゝのかし嫁入のじやまを しをるげなぬかすなぬかすなさる人に聞いたえ

人のよしあし

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 人のよしあし 本調子 人のよしあしおふのは野暮よわたしや誰の事 でもよけいなことはいはないけれどコレマおしじやない からさはりにならないエゝ事をいふ(梅にうぐひす同調)

氷面かゞみ

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 氷面かゞみ 本調子 ひもかゞみとけてぬるゝ夜のそのうつり香に匂ひ かさぬる閨のうめ

ひぢを枕

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より ひぢを枕 本調子 ひぢを枕につひうたゝ寝をむりに起せば大欠伸 はくしよ風の科ではないかいな

人に意見

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 人に意見 本調子 人に意見をしたわしが今では我身がはづかしい 思案の外とはこのことか

ぴんとすねては

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より ぴんとすねては 本調子 ぴんとすねては又わらひ顔苦労させたり泣か せたり色の世の中苦の世界

ひとり寝の

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より ひとり寝の 本調子 ひとり寝のさびしさに行燈引よせのむ煙草枕に あてし文のはしかへすがへすも深ざけと浮気ごゞろの 出ぬやうと書いたる文ハよその花それにまよふたが ばからしい(長き夜同調)

廣い世界に只一人

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 廣い世界に只一人 本調子 廣い世界にたゞ一人こゝろ残りの只一人逢ハなきや さびしいたゞ一人浮世はいやぢやたゞひとり

人に拾はれ

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 人に拾はれ 本調子 人に拾はれもう百年目わたしやお前に惚れ申す いやならいやだと申すべく候どけうさだめて居や しやんせわたしもその気でゐるわいなお互ひにおさつし

廣い世界

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 廣い世界 本調子 廣い世界をこゝろからせまう楽しむ仲でさへ 任せぬ首尾をとやかうと愚痴な台詞も恋の癖

四季 秋

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 四季 秋 本調子 十六夜の月は待たねど君を待つ心も知らでと すねて見て優しい言葉にまた笑顔二人手と 手を丸窓にあければ差し入る月の影見あぐる 空に啼き渡る雁も仲よく女夫連

御題社頭暁

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 御題社頭暁 本調子 初烏どこに寝たかよすみよしの松は誰ともしら 鷺や使ひにとなら鳩の文一筆そめて丹頂の 鶴はめでたし鶯は梅の匂ひの鳥居まへ晴れて雀も 躍るぞへ鳥追ひ追羽子追ひやるなヤーレ萬歳 御代は豊に代々…