二上り

いくら口説いても

いくら口説いても張子の虎は すました顔して首を振る振る なれどその日その日の風次第 <奥付がない小唄集より>

いつもよし原

いつも吉原五丁町やナアおいらん道中 地廻りそゝりの潮来ぶし 店すがゞきをひくので 禿が格子の内からもしえと呼ぶわいな <奥付がない小唄集より>

稲荷の祭りの

稲荷の祭りの太鼓の音 狸つくづく考え ひとりで気をもむ腹つづみ <奥付がない小唄集より>

いくふし

幾ふしの木小屋のうちの蒸し暑き まだ漏る雨のあとぬれて 湿るむしろを女夫ござ 引きよせられて手をかりの枕 近くに蚊のむれる はらうよしなき薄物の袖の模様の乱れ草 戸のすきのぞく お月様 <奥付がない小唄集より> これは、木小屋とも呼ばれています。

引汐

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 引汐 二上り 引汐の流れにまかす舟のうち月の影さへ朧夜に うきつ沈みつ三味線の(三下り)音はやさしき桂川むかし しのぶやほとゝぎす

四季 冬

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 四季 冬 二上り 冬の夜に逢へば嬉しき置炬燵たゆる間も なきさゝめ言今宵やらじと引きとめし雨も いつしか雪となり静に更けてゆくわいな

下妻の

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 下妻の 二上り 下づまのナアヤレ壇所のお所化の言伝にやサンヤレ おひさ女はまめなかサアねんねこそだつかサンヤレ

三つの車

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 三つの車 二上り 三ツの車にのりの道火宅の門をや出でぬらん そら出た生霊なんぞとおう怖や身のうきに 人の恨みはなんのその私の思ひハ怖いぞえなぞと 御息所がおつうすましてお能がゝりでおつしやいまし たとさなう…

都ではやる

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 都ではやる 二上り 都ではやる起上り小法師よい殿御見ればつひころころ ころころとがつてんかがつてんか合点にて候

雪の玉水

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 雪の玉水 二上り 雪の玉水それそれそつと軒につらゝの丈くらべ 春はとぼそへ音づれど山の小僧がおう寒小さむ 泣いて来たのぢやないかいな

雪のあしたのゐ続け

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 雪のあしたのゐ続け 二上り 雪のあしたの居つゞけ誘ふ待乳の鐘やかもめ啼く 絶えて久しき舵の音流れ流れて行末ハ君が縁しのもやひ船

雪はしんしん

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 雪はしんしん 二上り 雪はしんしん夜も更けわたるどうせ来まいと真中へ ひとりころりとひぢ枕なん時ぢやあゝ寝入られぬ

雪のだるま

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 雪のだるま 二上り 雪のだるまに炭団の目鼻とけて流るゝ墨衣

君が罪

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 君が罪 二上り やくのは野暮と知りながらあの忘られぬ甘くちに よそでもそれと胸に針嬉しがらせて罪ぢやぞへ

曲独楽

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 曲独楽 二上り 雁くびの上でかぶりを振る独楽の衣紋流しや 右左りヤリソコナイハ御用捨あぶない刀の刃渡りを 見てゐる私の氣がもめる

木小屋

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 木小屋 二上り 幾ふしの木小屋の内のむし暑きまだ漏る雨の後 ぬれてしめるむしろを女夫ござ引よせられて手を かりの枕近くに蚊のむれる払ふよしなき羅の裾の模 様のみだれ草戸のすきのぞくお月さま

切れてくんなますな

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 切れてくんなますな 二上り 切れてくんなますな権現堂の堤わしがこゝろも くみもせで首の丈ざんすよ石地蔵

君と寝るかや

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 君と寝るかや 二上り きみと寝るかや五千石とろか何の五千石君と ねよしよんがいな

君は今頃

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 君は今ごろ 二上り 君は今頃駒形あたり啼いて別れし山ほとゝぎす 月の顔見りや思ひ出す

廓は春風

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 廓は春風 二上り さとは春風柳が芽出しや畦水ゆるんだ裏 田圃お玉杓子が手足を揃へかはづに帰るか頬冠り

薩摩さ

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 薩摩さ 二上り 薩摩さこりやささつまと急いで押せば汐がさ こりやさそこりで櫓が立たぬ

座敷やひけすぎ

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 座敷やひけすぎ 二上り 座敷やひけすぎ床には一人そこでどうぢやいな 廊下ばたばた障子をさらりきやつ来たかと空寝入 えつへゝへつへお油さしましよ寝ずの番小腹立つ 間にごん明の鐘 これは落語の五人廻しみたい。

明の鐘

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 明の鐘 二上り 明の鐘うつゝに寝みだれの姿はづかしいつしかに 春の陽ざしの鳥影がうつる障子に手なふれそ夕べの 雨にほころびそめし花が羽風に散ろうぞへ

朝の海 むら雲

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 朝の海 むら雲 二上り むら雲の八声も湧きて鶏の啼くあら波騒ぐ 和田海の暁つぐる鐘の音に初日照そふ首尾の朝

朝の海 恵方詣

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 朝の海 恵方詣 二上り 恵方詣でも二人して真砂をひろふ濱づたひ空も心も 海原も晴れてのどかな朝凪の女波男波のさゝめ言 連理の松の下影にさまは百までわしや九十九まで 梢の鶴の千代かけて契りかはさん尉と姥

本祭(江戸祭?)

本祭 二上り 本祭 笛や太鼓にさそわれて 白足袋すがた ねじり鉢巻 わっしょい わっしょい 祭りだ わっしょい ことしゃ神酒所で 鏡をぬいて 揃い浴衣も にぎやかに 色と酒との 両袖を つなぐくるわの染め模様 隅田川さえ 棹さしゃ届く なぜに届かぬ 胸の内 今…

あまり寝たさに

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より あまり寝たさに 二上り あまり寝たさに狂言衆とねたらさやるまいぞやるまいぞ はあやるまいぞやるまいぞでやんれ夜を明かしたうつぼ猿 釣りぎつね太郎冠者なんぞといふていふてぢや

赤いもの

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 赤いもの 二上り 赤いもので云はうなら官女の袴に小豆飯疱瘡の 神に達磨さま月に七日のお客さんあれ恥かしさうな 顔の色千代に八千代にちよつとつむりの艶やかさそれハ丹頂の 鶴ぢやええゝそれもさうかいな猫貰ふても…

翌日はお立か

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 翌日はお立か 二上り あすはお立かお名ごり惜しいもしも途中で雨なと 降らば恋しう思ふたなみだ雨づい分御無事で 道中けんこでさあさ戻らんせ

雨や大風

小唄江戸紫 中田治三郎(昭和23)より 雨や大風 二上り 雨や大風が吹くのに傘がさせますかいな雨や大風 ふくのに傘がさせますかいな骨が折れまする